初心者メタル論(4) ネオクラシカル

1.はじめに

 シンフォニックメタルが交響曲のテイストを盛り込んだものだったのに対し、より広く深くクラシックの要素を取り込んだもの。それがネオクラシカルというジャンルだ。ハーモニックマイナースケールの使用や分散和音(コードアルペジオ)を用いた速弾きが用いられることに代表され、より速く、複雑であることが上質を知る人の欲求を満たすといわれるゴールドブレンド。これじゃ意味不明なので、簡単に説明していこう。

2.プチ音楽理論

 まずはハーモニックマイナースケールの説明から。さすがに一言では説明しきれないので、分解。まずは"マイナー"から。これは、わかりやすく言えば悲しげな音色のこと。その逆に、かえるの歌のように明るい曲は、マイナーの反対の意味を表すメジャー(メジャースケール)が使われている。さらに"スケール" とは音階、つまり音の並びのことをいい、これで"悲しげな音の並び"という意味になる。

 そして"ハーモニック"。これは、メジャースケールには存在した「リーディングノート(終止感を強くする音)」という音がなく、どこか物足りなかったマイナースケールに、それを導入することを意味する(のだそうだ)。

 と、言葉で説明しても…どうもわかりにくい。クラシックにも多用されているらしいんだけど、こればかりは実際に聴いてもらうしかないようだ。実際筆者もよくわかってない(スンマセン)。

 というわけで潔く諦めて、次に分散和音(コードアルペジオ)の説明。これも一つ一つわけて説明するとわかりやすい(はずだ)。

 まずは"コード"から。これは知っている人も多いと思う。コードとは、Cコード(ド・ミ・ソ)やDコード(レ・ファ#・ラ)など、いわゆる和音のこと。そして"アルペジオ"とは、そのようなコードを一度にかき鳴らすのではなく一音ずつ別々に弾いていくことを言う。

 つまり、よくギターで「ジャ~ン」(例:ド・ミ・ソの和音)と一気にかき鳴らす部分をひとつずつ鳴らす、というイメージだ。後はそれを高い方の音から弾いてみたり(ソ→ミ→ド)、ばらばらに弾いてみたり(ソ→ド→ミ)と色んなバージョンがある。もちろん音の数は3つとは限らず、オクターブだって越えちゃったりする。

 テレビCMなどで見たことはないだろうか。クラシックギターをタララララララ・・・と素早く流暢に弾いているのを。あれをエレキギターで、よりスピーディーにパワフルに演奏したものが、よくいう「速弾き(≒ネオクラ)」というわけだ。

3.様式美の確立

 ネオクラシカルメタルを、時に様式美メタルと呼ぶことがある。そこには、クラシックの様式を重んじるという意味でのネオクラシック様式美と、メタル史における伝統的様式を継ぐという意味での正統派的様式美の2つがあると考えられるが(仮定)、ここでは前者の様式美について述べてみる。

 そもそも上に述べたようなクラシックの理論を、最初にロックに持ち込んだのは DEEP PURPLE というバンドの Ritchie Blackmore というギタリストだった。彼はあくまでも基本をロック(ブルース)に置き、そこにクラシックを融合させるという手法を用いた。後にネオクラ(様式美)と呼ばれる音楽の誕生である。

 そしてそれを一ジャンルとして確立させるのに大きく貢献したのが、スウェーデン人ギタリスト Yngwie Malmsteen である。クラシックの理論をロック(メタル)に、という手法はもちろん、彼の人間とは思えないほどの超絶な速弾きが当時の音楽シーンを震撼させ、多くのフォロワーを輩出した。

 別に紹介しているシンフォニックメタルというジャンルの誕生や、他の様々なジャンルにおいてネオクラシック的理論、特に「速弾き」が用いられるなど、その影響は計り知れない。しかし、そこに必須条件としてあげられるのが「クラシックとロック(メタル)を融合させる優れた楽曲センス」と「複雑怪奇なフレーズを弾きこなす超絶技巧」だ。この二つを共に満たすことは非常に難しく、そのハードルの高さゆえ、このジャンルで確固たる地位を確保できるバンドはほとんどない。中途半端なネオクラギタリストがよく「Yngwie Malmsteen の亜流」と揶揄されてしまうのはこのためだ。

4.代表例

 そんな中、今もなお現役でその地位を確保し続けている Yngwie Malmsteen (通称インギー)。メタル界において「ネオクラ・様式美・速弾き」といえば必ずと言っていいほど彼の名がまず挙がる。

 例えば新人に速弾きを主流とするようなバンドがデビューするや否や「インギーのパクリだ」と言われてしまうこと多々。そのくらい有名で、偉大な人なのだ(それゆえに反対派の反論もものすごかったりするのだが)。

 彼のプレイはとにかく、流れるような速弾き(スウィープ)が特徴的で、その技術はまさに超一流。また感情を込めてゆっくりと力強く弾くことも得意としているようで、その情緒溢れるプレイはさすがといった感じ。

 そんな彼と対を成すように語られるのが、世界最速のギタリストとの異名を持つ Chris Impellitteri だ。彼のプレイはインギーと比べて、よりヘヴィネスを重要視したスタイルをとっていて、スウィープよりもオルタネイトを多用してしっかり弾くタイプの速弾きを得意としている。

 ジャンルは違うが、上に挙げた他にも MR.BIG の元ギタリストとして有名な Paul Gilbert や、メロデスバンド CHILDREN OF BODOM の若きギタリスト Alexi Laiho、厳密に言えば「速弾き」とは言えないが TIME REQUIEM などでキーボードを務める Richard Anderson なども、今流行のネオクラ系として知られている。

5.サンプル音源

 ポニーキャニオンのウェブサイトに Yngwie Malmsteen の特設ページ があり、そこに試聴できる曲がいくつかあるので聴いてみてほしい。どれを聴いてもネオクラ(速弾き)がどんなものか理解できると思う。最初は何を弾いているのかわからず面白くないかもしれないが、一つ一つの音や全体像が掴めるようになってくると印象が変わってくるはずだ。是非とも好きになって欲しい。

6.おまけ

 「クラシックやそのアレンジが聴きたければネオクラを狙え!」

 今まで述べてきたとおり、またその名の通り、ネオクラはクラシックの影響を強く受けたジャンルだ。当然ネオクラ系と呼ばれるアーティスト達には、好きなクラシック音楽があり、尊敬する古典音楽家がいる…そして彼らは、臆せずパクる… 失礼。引用、影響、インプレッション、といったほうがいいかな。どちらにせよ楽曲をそのまま頂戴して何のアレンジも加えない、ということは当然ない。主張しようとしているものによっても差はあるが、何らかのアレンジが為されたり、一部を抜粋するだけであったりと、様々な方法でクラシックそのものを導入していることがある。

 ゆえに、クラシックが好きで、かつギターのあの歪んだ音が好きだ!という人にはこのネオクラというジャンルは、ものすごくオススメなのである。


 さて…かなり長ったらしい文章ばかり並べる結果となってしまったが、最後に少し注意しておいてほしいことを。それは、管理人がネオクラだと思ってカテゴライズしたバンドの他にも、「これは立派なネオクラだ」とされているバンドもあるということ。他の全てのジャンルに共通して言えることだけど、何をもってどのジャンルにカテゴライズするか、というのに法則も規則もない。基準となるのはほぼ「個人の感性」のみ、である。特にネオクラ理論は多くのジャンルにまたがって存在することが多く、厳密にネオクラというジャンルに含まれるバンドを挙げることは難しいのだ。そのあたり、了承してもらえればありがたい。

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